東京に住んでいる友人がいるのですが、彼はカメラというものを持っていない。私と違ってモノを所有する欲があまりないらしく、いろんな物を欲しがってはすぐに買う私の姿勢をやや批判的に見てくる。そんな彼は私がカメラをやたらに所有し、飲み屋や旅行にぶら下げてくるのが理解できないようで、少し息の混じった声で「（iPhoneがあれば）カメラなんか要らんだろう」と言うのである。
こうなると正直どうすることもできない。いくらカメラの性能や、趣味としての愉しさ、スマホでは撮れない写真があること、等を説いたところで無意味だ。興味のない人に良さを伝えるのがほとんど不可能であることは例えを挙げるまでもなく明らかである。そればかりか彼は、そんなに写真が好きならアフロとかに写真を売ればいいじゃん。などとのたまう。そういうことじゃないだろ？カメラ好きを何だと思っているのだろうか。（念のため書き添えておくと、彼とは小学校からの大親友です）
確かにね、彼に限らずわざわざカメラに凝るのは特殊な人だと思っている人は少なくないだろう。昨今スマートフォンのカメラは飛躍的に性能が良くなり、少し前のコンデジを凌ぐほどだ。私とてブログに載せる証拠写真とかはiPhoneで済ませてしまうことが多い。実に便利だよね、撮った写真はそのまんまSNSなりブログなりに直行できるし、撮ったそばから自動でクラウドに保存されるんだもの。家族と共有するのも簡単、これが従来のデジカメだと、機種にもよるけど、基本はまず自分のPCなどに保存→クラウドにアップロード→共有フォルダにコピー…などと面倒臭いこと極まりなし。カメラ側にwifiや最近ではbluetoothで転送する機能があればまだ多少はマシだが、私が持っているwifi機能付きカメラは転送に失敗することも少なくなく、これはこれでストレスだ。bluetoothつきのカメラはまだ持っていないが…とまあ長々と書き連ねてしまったが、要するにSNSやLINEなどで写真を活用するのに、スマートフォン以上に便利なカメラはないということだ。
わかる。わかりますよ、カメラ好きな皆さんのおっしゃりたい事は。カメラにはカメラ好きにしかわからない良さがある。スマホじゃ、あっ味気ないじゃないか！（震え声）と。
しかしいくら叫んだところで、カメラ好きにしかわからない良さは、所詮カメラ好きにしかわからないのだ。（何を言ってるのかワシは）
フィルムカメラ全盛の頃、旅行先などでは老若男女問わず大小さまざまなカメラを携えて、旅先の記念写真を撮っていた。写るんです、みたいなディスポーザルなカメラも人気がありましたね。デジカメの時代になってからは、観光地ではコンパクトなデジカメを使っている人が多かったように思う。しかし、それらの人々の中で日頃からカメラを持ち歩き、旅行でも観光でもない日常を写真に収めていたという人がどれだけいただろうか。ほとんどいなかったと思う。ところが今は誰でもポケットやバッグの中にスマートフォンという高性能なカメラを持っていて、いつでもどこでも高画質な写真が撮れる時代。一億総カメラマン時代の到来である。フィルムカメラはもちろん、コンデジすら衰退していった現在、皮肉なことにカメラを絶滅に追いやった（大袈裟だが）その張本人であるスマートフォンによって、人類史上最大の写真ブームがもたらされることになろうとは、藤子F不二雄先生でも予見できなかっただろう、たぶん。
そんなわけで、一部の奇特なカメラファン以外の大多数の人にとってはカメラ＝スマートフォンなのであって、そういう人から「スマホあるのにカメラなんか要らんでしょ？」と言われたとしても我々は、いや、望遠とかマクロとかあるし…と震える声で言うこともなく、まあそうかな、言ってみればそうだよね。などと曖昧な笑顔を返すだけなのである。
ファ〜父ちゃんの話つまんないよォ〜
